幸い通り沿い、2階部分に釣鐘のあるお寺が「忠専寺」です。
通り沿いの掲示板には、月替わりで「お言葉」が書かれています。
「私の耳に念仏」
という言葉が気になったので、お話を聞こうと中に入ってみたのですが……
驚きの真実と、お坊さんの意外な日常を知ることになったのです。
私の耳に念仏
馬の耳に念仏とは、馬に念仏を聞かせてもわからないから無駄という意味。
対して「私の耳に念仏」とは……?
今の時代、忙しかったり深く考えなかったりして、私もあなたも「馬」と一緒になってはいませんか?念仏が右から左へと流れてませんか?
という意味だそうです。
「1年に1度くらいは意味を知るために声をかけてくる人もいますが、ほとんどないですね。ただ、足を止めて見つめている人は結構多いですよ」
そう教えてくれたのは、浄土真宗本願寺派「忠専寺」の智篤(ちとく)住職。
どうしてこれを考え付いたの?
いつも標語はどうやって考えるの?
と、興奮気味&食い気味に詰め寄る筆者に対し、返ってきたのは意外な返答でした。
「実は、あの言葉は売り物なんですよ。とあるお寺の出版社があって、そこが12枚綴りで販売しています。よく見ると、印刷物っていうのがわかりますよ」
うっそーーーーーーん!マジか!!!!!
しばし呆然となる筆者。確かに、墨で手書きかと思った紙をよくよく見ると、印刷してありました。
「先代は自分で考えていたようですけどね、私は毎回浮かばなくて。他の仕事も忙しいので、購入しています」
とのこと。まさかの事実を知ってしまいました!
この事実を記事にしてもいいんですか?との問いに、即答で「問題なんないんじゃないですか」と言われ、なぜかこちらがドキドキ。
“普通のおじさん”っぽさが親しみやすい智篤住職
心理学や人間形成に興味があり、そういった仕事に進もうと思っていたという住職。
そのために大学を目指すも、受験に失敗してしまいました。
そんな時、お坊さんでもある先輩に「君が目指す職業は、まさに坊さんの仕事じゃないか!」と言われ、それもそうかと目からウロコが落ちました。
それからお寺に興味を持ち、跡取りとしてお寺を継ぎ、今はの18代目の忠専寺住職になったのです。
お寺には、仏教関係の本もたくさんあります。
ところで、お坊さんというと堅苦しイメージというか、真面目なイメージ、私生活が見えないからか、謎のベールに包まれて近寄り難いと思ませんか?
ところが智篤住職、髪の毛があるせいもあるのか、笑顔が柔らかいせいか、やたらと普通の人っぽくてお話しやすい。お坊さんって、もうちょっと怖いのかと思っていましたよ……。
結婚してお子さんもいます。奥さんは、なんと高校の時の同級生!
高校を卒業してから6年間京都に住み、別府に返ってきて居酒屋で飲んでいたところ、ばったり智篤住職と再会したのが結婚のきっかけだったそうです。
奥さんとの馴れ初めを少し照れ笑いで語る姿も、なんとも親しみやすい雰囲気!
智篤住職は、お坊さんだけのバンドのメンバーでもあります。
ボーカル&ギター担当で、ビートルズ、チャック・ベリー、アジカン、ラルク!など様々な音楽を楽しんでいます。30代の頃には、ライブハウスでの演奏経験もあるそうです。
最近は忙しくてなかなか集まれないけれど、時間ができればギター練習は欠かしません。
「お坊さんって、お経を読みますよね?だから声がいいし、歌好きの人が多いんです。
必然的にバンドマンも多くなるんですよ」
とのお話に、思わず「なるほど!」と膝を打つ筆者。
お坊さんに、うっとりするような“声のイイ人”が多い理由がわかりました。
恐怖のお盆、1日67件訪問で住職も成仏寸前!?
謎に包まれた住職の生活とは、どんな感じなのでしょうか?
「普段は忙しくもないけれど暇でもありません。年中無休なので、まとまった休みもありませんね。
ただ、お盆の忙しさは殺人的です。毎年期間中に4~5kgは必ず痩せますね。
(終了後にビールを飲めば、すぐ戻りますけどね)
1日最高で67件まわったこともありますよ」
と、またまた衝撃の事実を教えてもらいました。
お寺の仕事を始めた頃は、そんなに多くの家を周れなかったという住職。慣れるに従い、周るルートにも工夫をするようになりました。
「右折は時間がかかるので左折しかしません。
いかに右折しないかが勝負の分かれ目ですね!」
とお盆に家を最短で回るコツを教わりましたが……使い道がみつかりませんね。
お寺の鐘にまつわる、ちょっと切ないお話
忠専寺は幸い通り沿いに面しており、周辺は多くの住宅があります。
以前は午前6時と午後6時、1日2回鐘を鳴らしていました。お寺の鐘を鳴らすのは、智篤住職が子供のころからの日課だったそうです。
しかし現代になり、朝の鐘の音に「うるさい」とのクレームが入り中止に。続いて夕方の鐘にもクレームが付き、今は除夜の鐘以外は鳴らせなくなってしまいました。
筆者は金の音は味わい深いしいいんじゃないの?と思ってしまいますが、いろいろな人がいますから何とも言えない感じですね。
「2階に鐘があるので、なかなか見晴らしがいいんですよ。大晦日にしか鳴らせないのは、ちょっとさみしいですよね」
と、鐘を鳴らす構えをしながら語っていただきました。
悩み相談だけじゃない?お寺に来るのはどんな人?
お寺には、いつ、誰が、どんな時に来るのでしょうか?なんだか気軽に入りづらい気がしたので、聞いてみました。
「意外と若い人が多いんです。つい先日も、心霊写真の処分とか、髪の伸びる人形などをお持ちになられました。
浄土真宗の教え上、
もちろん、お年寄りの方もいらっしゃいます。ほとんどが納骨堂へのお参りか、悩み相談ですね」
とのこと。誰にでも優しくお話をしてくれるので、なにか行き詰ることや困りごとがあったら、お寺に話を聞きに行くという選択肢も入れてみてはいかがでしょうか。
お坊さん直伝!正座で足がしびれた時の対処法
ここで、住職に教わった豆知識をひとつ。
正座をしていて、足がしびれそうだな……という兆候があったら、
足首をクロスして正座する |
上記を試してみましょう。ただし、相当痛いそうなので初心者は要注意です。
しかも、しびれきった後では効きません。
筆者も試してみましたが、時すでに遅しでしびれは治りませんでした。
今度はしびれきる前に試してみます!
まとめ
お寺は開かれた場所。誰でも気軽に来てOKです。時には、子供たちの遊び場になったりもします。
筆者を含め、普段接点のない人には足を踏み入れづらいかもしれませんが……とっても気さくに話を聞いてくれる住職がいますので、ぜひ足を運んでみてください。
今月の標語の意味を聞いてみたり、悩み相談をしてみたり、きっといつもとは違う視野が開けるでしょう。
智篤住職、ありがとうございました!
忠専寺
施設名 | 忠専寺 |
---|---|
住所 | 大分県別府市石垣東5丁目7-6 |
べっぷる編集長。ビーベップ編集長。フリーランスのライター・編集。夫・娘・犬と一緒に別府へ移住してきました。PR記事や取材記事、キャッチコピーや企画・構成・編集も請け負っています。
ブログ→泥ろぐ http://doronumako.com