大量の髪の毛とコルセットと松葉づえと情念が渦巻く場所「椿堂 遍照院」

「女性の髪の毛やコルセットが大量にぶら下がってるお寺に行きましょう」

書肆ゲンシシャの店主・藤井氏の発案により、べっぷる編集部は「椿堂」へと向かいました。

 

この一帯には「椿」のつくお寺がいくつかあります。

駐車場に車を停め歩き進み、一番手前に現れるのが「椿光寺」。その奥にあるのが「椿堂」です。

 

写真にある紅白の建物は「椿大堂(善通寺)」のもの。ちょっとややこしいですね。

大量の髪の毛とコルセットが放つ異様な空気

階段をのぼり椿堂の境内に足を踏み入れると、なにやら黒いもの目に入ります。

 

よく見ると……、お堂に吊り下げられているのは大量の剛毛!

 

縮れてゴワゴワになった長~い毛髪が、モサモサと風に揺れています。

 

その下に並べられているのは、マネキンの上半身ではなくコルセットや松葉杖です。

 

抜けるような青空と心地よい風、境内で寝そべる猫の姿。

小春日和の心地よい場所のはずなのに、背中がゾワゾワして止まりません。さわやかの対極にある風景で、怨念とか執着とか、そんな漢字が飛び出してきそうです。

 


現在吊るされている毛髪は明治初年以降のもの。それ以前の毛髪やコルセットは廃棄されており「俵30俵分の髪の毛を処分した」とのこと。

 

「この髪の毛は願掛けにくくりつけたのではなく、願いが叶った後にバッサリ切ってくくりつけたものです。コルセットには昭和5年、昭和9年など年号が書いてあったり、住所氏名が書いてあったりするんですよ、ほら」

住職が細かく説明してくださいます。コルセットだけでなく、松葉づえも大量にありました。

奥の院(ご霊窟)にある伝説の湧き水

「ご霊水はもう飲まれましたか?まだでしたらこちらから、どうぞ」。

住職に促され入っていったのは、奥の院です。

 

「その昔、弘法大師が椿の杖でカツーンっと突いたら湧き出した水」と言い伝えられている湧き水。なんと、テレビ番組「世界ふしぎ発見」でも取り上げられました。

 

伝説のご霊水、ありがたく頂戴しましょう。味はいたって普通ですが、1999年の新聞では「成分『特異な数値』」として紹介もされています。

 

湧き水もさることながら、霊窟内でぎょっとするのはおびただしい量の松葉づえやコルセット。気を抜くとあちらこちらで山積みにされていて、いちいち驚いてしまいます。

嘘みたいな本当の体験 重さの変わる石仏

奥の院から戻ってくると、にこにこ顔の住職が招き入れてくれました。

「重さの変わる仏様ですよ」

 

まず、普通に仏様を持ちあげます

 

次に「重くなってください」と念じてから持ちあげます

 


次に「軽くなってください」と念じてから持ちあげます

嘘でしょ嘘でしょ嘘だ!!!!!!
なんと、本当に重さが変わってるんですよ。いや、変わったように感じるんですよ。

「考え方・解釈はふたつありますね。ひとつは『こちらの願いを聞き入れてくれた』と解釈する場合。もうひとつは『自身の気の持ちようで変わる』=今の悩みも気の持ちようだと解釈できるんです」と、住職。

なるほどなるほど! 

 

ちなみに取材陣の結果は下記の通り。

ゲンシシャ藤井氏:重さが変わった
筆者:驚くほど軽くなった
カメラマン・マロ氏:全然かわんなーい

絶対嘘だろー、変わらないだろー!と疑念しか抱いていなかった筆者ですが、あまりの重さの変化に驚きました。疑ってかかっても重さが変わるなんて、おもしろいですね。

住職と椿堂の不思議なご縁

親切丁寧にお寺を案内してくださったのは、椿堂の鴛海総樹(オシノミソウジュ)住職。

福岡出身で、3歳頃からは広島で過ごしました。社会人として普通に勤めていたものの、突然「叔父の後を継ぎなさい」と言われ、1年修行の後に住職となったそうです。

「小学校の間、母は毎日お昼にあったかい弁当を届けてくれたんですよ。わざわざ毎日、普通しないですよね。とっても大事にされていました。しかし、ひとり息子を寺へやったのはなぜだろう?と長い間不思議だったんです。

赤ちゃんの頃、私は体がとても弱かったそうです。母も病弱で、子供は助からないかもと言われたそうなんですね。そこで母は熱心にこの寺で祈願し、私は無事今まで生き延びました。実はこの事実を母が亡くなる間際、今から2~3年前に聞かされたんですよ。仏縁というのはあるんだな、と、母がとても大切に育ててくれた理由が納得できました」

 

人間の信仰心とか、念とか、そいうものっていうのは確かなエネルギーとして存在するんだなーなんて、心から思った筆者。

住職、たくさんお話聞かせていただきありがとうございました!

まとめ

髪の毛もコルセットも松葉杖も、一定の期間、人間に密着していたもの。その分汗や涙や思想が絡みつき、目に見えないドロっとしたものもまとわりつき、ねっとりと生々しい感覚が漂っていました。

 

人間の“念の強さ”は目に見えないけれど確かにあって、世界を動かしているのかもしれません。

「椿堂(遍照院)」の情報

住所大分県豊後高田市黒土1400
電話番号0978-53-4418
駐車場あり
WEBhttps://www.tsubakidou4849.com/

この記事を書いた人
泥ぬマコ

べっぷる編集長。ビーベップ編集長。フリーランスのライター・編集。夫・娘・犬と一緒に別府へ移住してきました。PR記事や取材記事、キャッチコピーや企画・構成・編集も請け負っています。
ブログ→泥ろぐ http://doronumako.com

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