別府駅東口、亀の井ホテルの裏手の住宅街にある小谷商店、店名「酒のコタニ」は、別府の地酒専門店の草分け的お店。
市営温泉「不老泉」の並び、ビールケースがたくさん並んでいる2階建て建物が小谷商店です。
入り口を入ると、壁一面を埋め尽くす一升瓶がお出迎え。見たこともない珍しいパッケージのものも多く、酒飲みなら店内に入った瞬間思わず歓喜の声を漏らしてしまうに違いありません。
どこにでもある町の酒屋が、地酒専門店に方向転換したきっかけとは?
小谷商店は創業大正9年という老舗で、地酒を取り扱うようになったのは昭和57年頃から。それ以前は、キリンやサントリーなどのメジャーなメーカーのビールやウイスキーなどを置いているだけの、どこにでもある町の酒屋さんだったそうです。
「昔はそういう商品だけ売っていても、商売になったんです」とご主人。
現在のような地酒専門店に方向転換するきっかけとなったのは、顧客ニーズの多様化により、商売のあり方を根本的に見直さざるをえなくなったことに加え、昭和50年台に到来した「焼酎ブーム」でした。
都市圏の飲食店から、大分麦焼酎のみならず九州の焼酎の問い合わせが多く寄せられるようになり、ご主人は自らの足で全国の蔵元を直接訪れ、焼酎の買い付けに奔走したそうです。
麦焼酎の人気は当時に比べると下火にはなりましたが、現在は芋焼酎の人気が高く、また4〜5年前から九州産の日本酒人気もジワジワ上昇してきているとのこと。
小谷商店おススメの地酒をいくつかピックアップしていただきました。なんと試飲までさせていただけるというのでひゃっほーいですが、酔っ払わないように気を引き締めてレポートせねば…
利き酒・日本酒部門
三和酒類【和香牡丹(わかぼたん)純米酒】(大分県宇佐市)
こちらの銘柄は、なんといいちこを作っている三和酒類が醸造している日本酒。
「焼酎に飽き足らず、日本酒にも手を広げたのか?」と思いきや、じつは三和酒類はもともとは日本酒の酒蔵が4社合併してできた会社で、和香牡丹はそのうちの一社の商品。現在は他の3社で造っていた日本酒は廃止し、和香牡丹に一本化しています。
大分県産ヒノヒカリを使用、甘口〜中間の味わいとスッと消えていく酸味で後味スッキリ。食中酒におススメです。
小松酒造場【豊潤 大分三井(おおいたみい)】(大分県宇佐市)
大分三井は醸造米の品種で、栽培の難しさからしばらく姿を消していたものを近年復活させた、いわゆる「復活米」です。
やや甘口、まろやかな中に大分三井独特のワイルドな後味が個性を放ちます。
ぶんご銘醸【佐伯飛翔 純米酒/ひやおろし】(大分県佐伯市)
「ひやおろし」とは、本来春と秋に二度行われる加熱処理(火入れ)を、春の一度だけにとどめて瓶詰めし、貯蔵庫で夏の間寝かせて秋に発売されるお酒のこと。要は、ひやおろしは秋の期間限定酒といったところです。
佐伯飛翔は米の味が強く、火入れ特有のコクとまろやかさ、自然な甘さが特徴です。
加藤吉平商店【梵 中取り純米大吟醸〜無濾過生原酒〜】(福井県鯖江市)
小谷商店で一番人気の商品がこちら!
数々の政府主催の式典で使用され、近年では海外でも要人が集まるパーティーなどで振る舞われているという、日本を代表するお酒。ラベルにあしらわれている横文字表記が、国際的な評価を物語っています。
中取りとは、お酒を絞るときの段階のことで、もろみを詰めた酒袋をしぼって最初に出てくるものを「あらばしり」、その次を「中取り」、絞りきる直前のものを「押切り」と呼び、中取りは3つの部分の中で味のバランスが最もよいとされています。
鍋店【吟醸にごり不動 生原酒】
まるでおかゆかというぐらい、濃厚で米の味わいを感じることのできるにごり酒。甘酒のようなドロっとした口当たりと対照的に、その味わいは辛口です。
千葉県産ふさこがねを100%使用した、しぼりたて生原酒で、若干の発泡もあり。
利き酒・焼酎部門
久保酒蔵【別府温泉だよ、全員酒豪!】(大分県佐伯市)
なんと、こちらは小谷商店オリジナルの本格麦焼酎。
手描きのラベルは、商品の発案者のお孫さんが描いたもの。可愛らしい見た目を裏切る荒濾過仕上げで、麦本来の旨味を存分に味わうことができるこだわりの一本です。別府のお土産にいかがでしょうか?
古澤酒造【八重桜 手づくり】(宮崎県日南市)
宮崎県唯一の土蔵の醸造蔵で作られた本格芋焼酎。
芋特有の香りとまろやかな口当たりは、飲み飽きしない定番の芋焼酎といったところ。
田崎酒造【焼き芋焼酎 みとら】(鹿児島県いちき串木野市)
「焼き芋焼酎」という焼酎をご存知でしょうか。
通常芋を蒸して造っている芋焼酎に対し、焼き芋焼酎は読んで字のごとく「芋を焼いて造る芋焼酎」です。焼き芋の香ばしい香りがほのかに漂い、臭みや雑味の少ないスッキリとした味わいは、芋好きのみならず芋焼酎が苦手な方にもおすすめできる飲みやすさ。可愛いパッケージも◎
この他にも、小谷商店には普通の酒屋ではありえないぐらいたくさんのお酒が、試飲用に準備されています。
おいしいおいしい言いながら試飲してたら、「これなんかどう?」と奥からあれこれおススメのお酒を持ってこられて、気がつけばおちょこ10杯分ぐらいは試飲してしまいました。試飲でしこたまに酔えるとは、なんたる役得。幸せすぎて死んだらどうしよう?
ボジョレー解禁の11月下旬は、日本酒の在庫が最も少ない時期
売り場の奥は倉庫になっていて、部屋全体が低温に保たれワインセラーのようになっています。
山のように積まれたお酒と、冷蔵庫の中にずらっと並んだ一升瓶。しかし、今回お邪魔した11月下旬は、日本酒はひやおろしから新酒(秋に仕込んで火入れを一度も行わずにすぐに出荷するお酒)へ入れ替わる時期にあたり、一番在庫が少なくなる時期なんだそうです。あとひと月もすれば、売り場や倉庫の冷蔵ケースが新酒でいっぱいになるんでしょう。
その代わり、今の時期はワインの新酒が多く入荷し、11月16日のボジョレーヌーボー解禁日から数日間は、目が回るような忙しさだったそう。若干お店のご主人も、ボジョレー疲れでげっそりされているようでした。
そんな感じで、ちょっとのつもりが閉店までおじゃましてしまいました。
お店の方も熱燗を飲んでホッと一息。仕事中もずっと「今日は寒いから熱燗が飲みたいわぁ」とおっしゃっていたので、一杯飲んで満面のこの笑みですよ。おいしいお酒が毎日飲めて、羨ましいな〜
おまけ:酒のコタニの建物の横の電柱広告。
まとめ
県内外のこだわりのお酒がそろう酒のコタニ、いかがでしたか?みなさまもぜひ、酒の小谷商店で今夜の一本を探してみて下さい。
酒のコタニ
店名 | 小谷酒店 |
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住所 | 別府市中央町8-14 |
電話番号 | 0977-23-0698 |
営業時間 | 9:00〜20:00 |
定休日 | 不定休 |
駐車場 | あり |
1977年大阪生まれ。温泉と酒をこよなく愛し、20年近く暮らした東京から、2017年春に別府へと移住してきました。